雲を恋う

須田景凪

何処かへ行った晴天と 斑な暮らしの中
見慣れた横顔 窓を突いた雨音
言ってしまえば 全ては取るに足らない些細な言葉が尾を引いていく

抱えた痛みの数なんて
覚えてはいないけれど
確かにふたりの愛を育てた

安っぽい日々を送ろうね 下らない話をしようね
乾涸びた朝を重ねては 幸せだと笑おうね
きっと先のことは分からない 今はただしなだれた貴女が
涸れる事のないように 歌を歌うのだ

慰め合うのは簡単だ
故に此処にあるのは くすんだ空模様
夢に飼った蜃気楼

貴方の気を惹こうとして
独りに善がっていた
幼く醜い恋心だ

迷い込む闇の行く末に 安らかな心が燈った
差し伸べた手の平はどうか離さないようにしようね
雨の這う紫陽花を見ては 共に揺れる貴女の言の葉が
褪せる事のないように空を仰ぐのだ

囁きを交わして
何でもない秘密を持った
洒涙雨のような思い出だ
瑠璃色を隔てて
ぎこちなく笑い合っていた
華やかな笑顔に見惚れました

ほら
安っぽい日々を送ろうね 下らない話をしようね
乾涸びた朝を重ねては幸せだと笑おうね
きっと先のことは分からない 今はただしなだれた貴女が
涸れる事のないように歌を歌うのだ

在れるままであるように 君を愛すのだ